INTERVIEW 2004

2003 2005~2007

INTERVIEW

2004
1月 NHK大河ドラマ『新選組!』メインテーマを独唱。
3月 MLB開幕戦セレモニー 日米の両国歌を歌う。
4月 ウィーン・グランドコンサート出演
6月〜7月 新国立劇場「ファルスタッフ」に出演。
9月11日 JAL「薬師寺 音舞台」
10月27日 アルバム 「Tenorissimo」発売。
12月 Morzart『His Life, His Operas』 全国ツアー
12月31日 NHK「紅白歌合戦」2度目の出場。

 モーツァルト大好き


プッチーニとかヴェルディとかはすごくふくらみがあったり、パッションとか色んなものがすごく出てきて、
それをみんな、感情的に歌うんですけど、モーツァルトっていうのはすごく、
「音楽そのもの」、、、逆に言うと楽譜に忠実、楽譜に全てが書いてあって
その楽譜を理解すればするほど、そのシンプルな音楽の中にどんどんどんどん深みがあって。
よくウィーンフィルとかがモーツァルトを何遍も聴けば聞くほど難しくもなるし、わからなくなるっていう人もいるんですよ。

それぐらいシンプルなところにどういう風に表現すればいいか…っていうと音楽に忠実にしろと。
(中略)
僕、モーツァルトの直筆の楽譜を見たことがあるんですけど、
音楽が寸分の狂いもなく綺麗に書いてあるんですよ。
で、一度も消したような痕もなければ見事に楽譜にはまっていて、
本当に自分の中に何も狂いもなく、シンプルにそれをストーンと書いたモーツァルトの天才ぶりと言うのが
それを見て、気持ちと心をわかった感じもするんですけど。

そういうモーツァルトの音楽って言うのは派手さ云々よりも
ピュアで心に素直に届いてくる音楽そのものだと思っています。

(RSKラジオ 「ラブ・アンダンテ」より)

 チャレンジ

したいですね。
自分の出来る範囲で、自分の…まず音楽を楽しんでもらいたい。
自分の声で、色んなものを聴いてもらいたいっていうのはあるんで。
その中でもちろんオペラのアリアが僕が一番大事にしているところなんで。
今後そっち(オペラ)の方に行くかもしれないけど、今は自分のできる事を自分らしく表現できればなと思っています。

(RSKラジオ 「ザ・コラム」より)

 好きなもの

好きなものは何かと聞かれると、僕は「刺激を受けるもの」が好きなんです。
刺激を目から耳から受ける映画とか音楽も好きだけれど、
けっこうどきどきするのが好きなので、昔はオートバイが大好きだったし、
遊園地のジェットコースターには今でもよく乗ります。


どこにも逃げ隠れできない、怖いけどうずうずして楽しいっていうあの感覚がたまらない(笑)。
その感覚って、なんだかステージに立ったときのどきどき感に近いものがあるんですよ。
そこから逃げられなくて楽しまなきゃいけないっていう……。
だから変なところで慣れようとしてるのかな(笑)。

実際、初めてウィーンに行ってステージに立ったとき、どきどきしてすごく逃げたいと思ったあの気持ちは、
初めてバイクに乗って速いスピードでコーナリングにさしかかってしまったときに似てましたね。
もうきちゃったから逃げられない、どきどきしながらも楽しむしかない、
でもそれを過ぎると快感になるというか、もうやめられないというか。
気が膨らむし、力も出るし、逆に途端に力が抜けて違うところに意識も気持ちもいったりする。
これはステージとの不思議な共通点なんですよね。


ちなみに今、1番やってみたいのはスカイダイビング。
よく言いますよね、これを1度やると何も怖くなくなるって。
そういうものを1つやってみるとステージでの度胸とか表現も少し変わるのかなと思ったりもします。
そんなことを考えている歌手はあんまりいないかもしれないけれど(笑)。

(Morzart『His Life, His Operas』プログラムより)

 ffとpp

アメリカがfortissimo(フォルティッシモ)だったら、
日本っていうのはその本当に美しいpianissimo(ピアニッシモ)のある国で、
ピアニッシモがあるからその“グワァーッ”じゃなくて、
その中でいろんなことを見つめて考えて、
それをじゃぁ、どうやってね、言葉っていうか、メッセージでも良いし
世の中に通じるフォルティッシモにするかっていうことを
そのピアニッシモの中でしっかり考える。
そのピアニッシモは日本の心。


で、ピアニッシモがけしてフォルティッシモじゃないわけじゃなくて、例えば、
「ラー」とか静かに歌うピアニッシモと、「ラァー…」ってちゃんとエナジーを乗せた、
それが本当のピアニッシモで、
ピアニッシモでも気持ちは絶対届かせなきゃいけないから、
日本ていうのはちゃんとした支えがあるから素晴らしいピアニッシモで

何もエナジーのないただの「ラー」っていうピアニッシモじゃなくて
ちゃんと力のある、伝わるピアニッシモ。


*fortissimo(強く)
*pianissimo(弱く)
(NHK「英語でしゃべらナイト」より)

 テノリッシモ+@の話

今は、モーツァルト・オペラのリリック・テノールの役が自分にいちばん合っていると思います。
《コシ・ファン・トゥッテ》のフェランドの滑らかで美しいアリアとか、
僕の声の持ち味がうまく出せる。それから、
プッチーニの「冷たい手を」やドニゼッティの「人知れぬ涙」も特に完璧に歌いこなしたいアリアですね。
もちろん、ドラマティックで重い声を必要とする役柄にも惹かれますが、
レパートリーは急がずじっくり決めて行きたい。


昔と比べると声の幅も確実に広がって、
だんだんコントロールできるようになってきたとは思うので、
リリックな部分を中心に残しつつ、どこまで広げられるかはチャレンジですね。
いろんなタイプのテノールがいますが、作品から自分で感じとったものを表現して、
観客に伝えることのできる歌手になりたい。

 スリー・チャイニーズ・ラヴ・リリックス

英語だけど、ストレートな“アイ・ラヴ・ユー”じゃないし、
西海岸の人なのに太陽いっぱいの脳天気な曲とは違う、切ないかんじがいい。
窓辺で物思いにふけっているようなポエティックなところがありますね。
そしてミステリアスでファンタスティック。そんな彼の代表作です。
イタリア語とは違う口の開け方で、いつも話してる英語とも違うから凄く難しい曲だけど、
これからもどんどん歌っていきたい。


今回の3曲のコンビネーションも見事ですよね。特に最後の曲の、


“ドラゴンに乗ってラヴを連れて行こう”っていうのが素晴らしい!

 ブリング・ヒム・ホーム

昔からよく歌っていました。大学時代からアンコールの定番。ツアーとかで、
公演が終わってみんなで打ち上げをしているとき、
“ジョン、何か歌えよ”って言われた時にもこの曲を(笑)。


“私は死んでもいいから、この子を無事に家に帰そう”って…アカペラでもスピリチュアルなものがこみあげて来ます。


今もコンサートの最後はよくこの曲で締めます。
聴きに来てくれた人達に今日得た何かを家まで持って帰って欲しい、という願いを込めて。
明日へ希望の思いをつなぐ、とてもポジティヴな曲なので大好きですね。

 ヴンダーリッヒ

《魔笛》の「なんと美しい絵姿」はウィーンでオーディションを受けた時に歌った曲であり、
ヴンダーリッヒが得意としていた曲。
彼は僕の神様です。大学時代に彼の歌唱を聴いてショックを受けました。
彼が普通にやってることが、いざ自分で歌うとなると、なかなかできないんですよね(笑)。


イタリアものもいいけど、いつかヴンダーリッヒのレパートリー(ドイツもの)に挑戦したい。

僕のもう一つの原点だから。

(すみません、雑誌名忘れました。(汗)音楽雑誌だったと思います…。)

 「新選組!」メインテーマを歌うきっかけ

作曲の服部髞Vさんが僕のまっすぐな声があのテーマ曲にピッタリ、
ということで、幸運にもお話をいただくことができました。
とても良い機会を頂いたと思います。ルールルルが多いですけど(笑)。
脚本の三谷幸喜さんが書いてくださった、短い、けれども意味の深い歌詞を、
大事に心を込めて歌いました。


新選組に関する資料も読んで、
「誠」の旗の下に信念を持って集まる彼らの気持ちを歌に込めたつもりです。
自分の「日本人」の部分を再認識する事もできました。
あのメインテーマに関しては、渾身の作だと思います。
毎回、ドラマを見るたびに「いい歌だなぁ・・・」としみじみ思いますから……(笑)。


それから、番組ラストの紀行バージョンのハミングは、実は僕が提案したんです。
透明で、ソフトな感じを出すためには、ハミングがベストなのでは、と思ったんですよ。
N響さんと向かい合って、大きな音を正面に浴びる形で歌ったんです。
実はまるっきり自分の声が聞こえない状態だったんですが、
とにかくセンセーション(感覚)を信じて歌いきりました。
ちゃんと歌えていたかどうか不安だったんだけど、後で聞いたら素晴らしい出来だった。
あれは貴重な体験でした。

(e+のインタビューより)

 「新選組!」メインテーマに関して

新選組の若者たちが持つ情熱には、僕にも共感するところがあります。
あれは僕が初めて日本からアメリカに渡った大学時代。

寮で演劇を勉強しているグループと一緒だったんですが、彼らと
「自分は何者なんだ」「人生ってなんだ」というテーマを
酒を飲みながらガンガン話し合ったことを思い出します。
僕自身としては、自分がハーフであることについて考えていました。
日本と外国の架け橋になることはできないだろうかと。


今、僕はジョン・健・ヌッツォという名前を多くの人に知ってもらえる
ようになりました。
新選組が世の中を変えようと努力したように、僕は
自分が授かったこの声で、世の中に対して
何ができるのかを考えているところです。
(NHK ステラより)

 「新選組!」メインテーマの歌い方

実際にメロディーを聴いて、
ふだんの歌い方では「新選組!」らしさは表現できないだろうと思いました。
たとえば、導入部分の「LaLaLa」。
レコーディングのとき、作曲された服部隆之さんの前で歌ってみたところ、
「何かが違う」と言われて。
僕もそう思い、リクエストしてオーケストラの生演奏を聴かせてもらいました。
すると確かに、横に流れるように「LaLaLa」と歌うオペラの発声ではしっくりこない。
ふさわしいと感じたのは、
ひとつひとつの音をスタッカートで踏み締めていくような「ららら」。
事前にタイトルバックの映像や第一話を拝見し、ヒントにしていたんですが、
やはりオケと向き合ったときにイメージが一気に膨らみましたね。


三谷幸喜さんが書かれた歌詞の主人公は、近藤勇。
隊士を率いて信じた道を突き進んだ勇みのように、
オケを引っ張るリーダーになったつもりで歌いました。


「いとしき」の「い」の音からアタックは強めに、
続く言葉も勇壮なリズムに乗せてはっきりと。
短い歌詞ですが、勇みの優しさ、強さ、苦しみ、希望、
さまざまな心理を表現できればと、少しずつ発声を変えました。
なかでも僕の心をとらえたのは、「旗」という言葉。
勇みが目指したものの象徴です。

音楽的なクライマックスを持ってきたのもその部分。
すべての感情を閉じ込めて、オケの迫力に負けないように歌いました。
そして最後の「夢を」は、目いっぱい声を響かせました。
世の中に対する勇みの叫びというつもりで。
(NHK 「新選組!〜後編」より)

 オペラ公演についてのあれこれ

いつだったか女の子と掛け合いをする場面で歌を忘れちゃった。
『何だったっけぇ〜〜〜』って指揮者を見たら彼も……
(と大慌てする指揮者を再現!)
終演後、相手役に殴られました(笑)。

(シアターガイド1月号より)

 ショーの司会

ショーの司会というのは、
十五分間でどれだけ観客の興味を惹きつけられるかが勝負なんです。
お客さんがつまらなさそうにしていれば、
その場で台本やアプローチを変えてみる。
それはコンサートの流れを作る上でも同じこと。
当時の経験は、歌手としての自分にも役立っていると思います。

(潮 8月号より)

 オペラをもっと知って欲しい。

僕は普段からいろいろな人にオペラについてのイメージを
リサーチしていまして。(笑)

例えばタクシーの運転手さんにもよく聞くんですけど、
「オペラ?俺にはよくわからないから聞けないよ」という答えがほとんどですね。
難しい、敷居が高いというイメージを壊すというのは
とても大変なことだという実感があります。

周囲からも「オペラはわからないよね」とよく言われますが、僕にしてみれば、
その「わからないよね」という言葉がすごくわからないんです。
「演歌ってわからないんだよ」という人はあまりいないですよね。
要するに好きか嫌いかの問題だと思います。

映画やコマーシャルでオペラの曲を聴いて「あ、この曲いいね」という瞬間は
誰にも絶対ありますよ。だから、すんなり聴いてもらえるきっかけづくりを
していきたいと、僕は常に考えています。
(GRANより)

 オペラ歌手として

ただ僕は、
人前に立つ感覚だけは忘れたくない、とりあえず音楽に触れていたい……
そういう気持ちがあったからDJ等やっていたんだと思いますよ。
もちろん踊ることも好きだったし、ね。


『生きるって何だろう?』『自分は何が好きなのだろう?』って
活動休止中に考えていた。悩んで眠れない日もありました。

世界最高のレベルを感じてみたい。
その思いで突っ走ってウィーン国立歌劇場と契約できた。
だから今は、ここにいるのが凄く心地良いし、
少しでも長くこの世界に触れていられるよう、努力は惜しまない。


寄り道した分だけ、自分は本当に歌が好きなのだということがわかった。
そして歌っていることの喜びを全身で感じられる。
それは、僕の強みでもある。
好きなことやっているんだから、少々の間違いなんかしても動じない。
今は“really enjoying”−これです。(笑)。

(PRESIDENTより)

 今後について


今後は海外ではオペラを中心に、日本ではそれ以外の活動を含めて、
さまざまな分野のアーティストとコラボレーションしたいですね。


僕はまだ、オペラの世界の階段を上り始めたばかり。
いつか『あの役はジョンでなくちゃ』と言われるようになりたい。
かといって、オペラばかりでガチガチになるのも嫌ですね。
美しいものやピュアなものを、常に採り入れていきたい。

(潮 8月号より)

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