光源氏 さかさまに行かぬ年月よ 美しき男たちの「源氏音かたり」

プログラム

第一章 

求め続ける時代
「自らの半生を振り返る」

1 琵琶の音
2 凪 [NA-GI] (塩谷哲)

「母、亡き女性たちへの祈り」
3 ひこぼしの涙 (東儀秀樹)
4 午後の汀 (東儀秀樹)

「若き日、理想の女性への憧れ」
5 ピアノ即興
6 Life with You (塩谷哲)
7 アルマンダ (バッハ)

「若き日、理想の女性を求めて」
8 「魔笛」より〜なんと美しい絵姿〜
(モーツァルト)
9 即興演奏
10 「ファルスタッフ」より〜唇に喜びの歌が〜
(ヴェルディ)
11 陵王の舞 (古典雅楽)
第二章 

見つめなおす時代
「未知の力への驚きと畏れ」


12 ラルゴ (バッハ)
13 朝倉の音取 (東儀秀樹)
14 水 (東儀秀樹)

「試練、そして栄華へ道」

15 FRUITFUL DAYS (塩谷哲)
16 ENHARMONIE (塩谷哲)
17 越天楽今様 (古典雅楽)

第三章 

葛藤と苦悩の時代
「死への覚悟、出家への苦悩」


18 シャコンヌ (バッハ)
19 夢路まどか (東儀秀樹)「解放へ」
20 A Man In Paris (塩谷哲)
21 笙の演奏
22 酒胡子幻想 (東儀秀樹)





僕は本を読むのが結構好きです。
小学生の頃は宮沢賢治とか芥川龍之介とか江戸川乱歩とか結構有名な小説を読んでいました。
僕の青春のバイブル「銀河鉄道の夜」
あれだけ宇宙とか自然の摂理を幻想的に、
子供にもわかるように書いた作品ってないんじゃないかなと思います。



そんなこんなでさて光源氏の公演です。

一応ここでおさらい。

光源氏というのは『源氏物語』というお話の中に出てくる主人公の事でとっても美男子なんです。
で、その光源氏って男はかなりの女好きなんですね。

和製ドン・ジョバンニというか、

King Of Lady-Killerという称号が一番似合う人物というか。

(なんて書きましたが、自分の人生を省みるというか、どっかの国の元総理大臣のように
自分自身を客観的に見ることができる分、
ドン・ジョバンニより人間は出来ていたなぁと個人的には思います。)

簡単に説明すると『源氏物語』っていうお話しは、

そのイケメンの光源氏という名の 女たらし が、
下は少女、上は定年を迎えたマダムまでという
驚異的な守備範囲
多くの女性との燃えるようなアバンチュールを描いた

日本が世界に誇る長編純愛文学小説の金字塔的な作品。



っていうのが僕の歪んだ解釈なわけですが。

とにもかくにも現代の日本なら女の世話をする前に
とっくに公安のお世話になっている男のお話しです。





今回の公演は“美しき男たち”という単語もあります。
“美しき男たち”とはもちろんヌッツォ含めて6人のアーティストの事です。

この6人がローラスケートを履いてステージをあくせく走りながら
「パラダイス銀河」を熱唱する
なんてことはまったくなくて、
その源氏物語を読んで奏でて歌って踊ってお花挿して表現する幻想的な舞台。
個人的には全体を通すと“美しき男たち”というよりも、
“東儀さんと愉快な仲間たち”という印象を受けました。

客層が8割くらい女性で。
僕の座った3階席、右も左も前も後ろも女性でして。
気分は軽くハーレムですね。はい。

まずは1部。
幕が上がるとステージに6人が立っていました。

6人の担当と個人的な解説↓

東儀秀樹…担当:雅楽・舞。光源氏(主役)。
橋爪淳…担当:語り。哀愁漂う渋い声。
古澤巌…担当:ウ゛ァイオリン。シャコンヌ、シャコンヌ、シャコンヌ、以上。
塩谷哲…担当:ピアノ。古澤さんと良いコンビでした。
ジョン・健・ヌッツォ…担当:歌。これから書くので省略。
小川珊鶴…担当:花。6人の中で一人だけ時間と戦わなければいけない大変な人。

実はこの公演、僕の中で光源氏の朗読会しながら日本的な音楽のオンパレードで、
ヌッツォは和歌でも歌うのかなぁと想像していました。
それと、会場についてから始まるまで1回もプログラム見なかったので、ちょっと失敗しました。(後述)

びっくりしました。

最初は、淡々と光源氏的な厳かな幕開けで。
まずは光源氏の朗読。
橋爪さんの声が結構渋くてイイ声です。途中で気持ち込めたり、
読みながら動いたりして。
それから音楽。


え〜っと、その、あの、なんていうのかな、


光源氏の周りでヴァイオリンが♪チャ〜チャチャ〜ってして
ピアノが♪ピョンピョコピョンってして
ヌッツォが♪ラ〜ラ〜ラ〜ラララってして

光源氏が舞っていて

またヴァイオリンが♪チャ〜チャチャ〜
ピアノが♪ポンポコポコポコ〜
ヌッツォが♪アアアア〜ア〜
お花がザックザク

朗読があって

またヴァイオリンが♪チャンチャカチャカチャ〜で…


ぐああぁぁぁ。

どうしよう、今までのレポートの中で最高に頭の悪い文章を書いているよオイラ。

ふざけているわけじゃないんですよ。
凄い綺麗な舞台だったんですよ。
幻想的だったしね。

ただ、「具体的にどういう部分が?」って聞かれると答えられないんですよ。
自分の語彙のなさに情けなくなります。
言葉ってもどかしいやね。

で、プログラム見ていなかったから頭真っ白のまま聴いていたんですけど。

だから前半は自分の中でどう受け取って良いのかわからなくて。
多分、他の観客もそうだったのかな?
前半は拍手が1回もなく淡々と進んで行きました。
だから、あとでプログラム見返しても
「あの曲、どれだろう?」ってちょっとわからなくなったりもしたのですが。

それで、聴いた事のあるメロディだなって思ったらモーツァルトで。
なんで光源氏にモーツァルト?と、ちょっとビックリしたんですけど。

この公演、シリーズ通してマイクのある公演だったということは事前から知っていながらも、
淡い期待をしながらヌッツォの歌を楽しみにしていたのですが、
やっぱりバッチリとヌッツォの歌声は音響機器に拾われていました。

う〜ん、仕方ないですが、残念です…。

3階からだと、下からくるヌッツォの歌声と、真正面から飛んでくる音響の拾ったヌッツォの歌声が
同時に届いてくるので、まるで2重唱のように聴こえて、
“夏の終わりの不思議なハーモニー”って感じでした。

淡々と進行しながら前半終了。

休憩に入って早速、プログラム確認。

  <光源氏 さかさまに行かぬ年月よ〜美しき男たちの「源氏 音かたり」〜>は、
  雅楽師の東儀秀樹をはじめ、
  さまざまなジャンルの今をときめくトップアーティストたちの個性を生かしたパフォーマンスにより、
  光源氏の心模様を現代によみがえらせた音楽物語です。
  千年の時空を超えて、なお色褪せることなく、多くの人々を魅了し、
  日本文化の美と思想に大きな影響を与え続ける物語文学の大傑作の魅力を、
  6人の男性アーティストのコラボレーションによる幻想的な舞台でご堪能下さい。
(引用)

なるほど、てっきりもうちょっと硬い公演なのかと思ったら色んな音楽で
楽しむ催し物だったんですね。(今頃納得)


2部からはそういう意味で、1部より理解をしながら楽しむ事が出来ました。
きっと他の人たちもそうだったのかな、2部からは曲と曲の間に拍手が入るようになりました。


拍手といえば、僕はよくライブに行くんですけど、
ライブが終わってアンコール入る前って自然と色んなところから拍手が起こるんですよ。
パラパラと。そのパラパラの拍手がどんどん大きくなって。

でもまだ全体的にはまだバラバラでごちゃごちゃしているんだけど。

その拍手があるタイミングで綺麗にそろう瞬間があるんですよ。
あれって誰がどんな魔法使っているんでしょうね?
僕はライブのああいう瞬間に立ち会うのがものすごい好きで
(もちろん、ライブ自体も大好きですよ)
今日の公演でも会場全体でそういった雰囲気になったのは
とても気持ちが良かったです。

2部からは光源氏の人生も折り返し地点。
1部の華やかな感じからちょっと寂しげな雰囲気に。
朗読も1部では「何も知らないお前と〜触れてるだけのキスをする〜」みたいに強気だったんですが、
2部では「好きな人が死んじゃったよー助けてードラえも〜ん」みたいな内容に。

つづいてシャコンヌ。

バイオリン狂想曲?(そんな言葉は存在しないけど)
最初は静かな展開で、途中で光源氏の気持ちを現すためか、シベリア超特急のようなものすごい速さで演奏。
10分以上の独走ならぬ独奏を。
その時の舞台の演出が(お花をはじめ諸々)美しかったです。

ただ、ちょっと長いかな、僕の周りでは『ドサッ』とか『ボトッ』とか『すぴー』と、
夢の国へ旅立たれた方々が何名かいてちょっと切なくなりました。

クライマックスは6人総出で源氏のそれまでの人生を表すかのように
華やかな〆に。

壮大な音楽で、お花も上から下から登場したり、すごい舞台でした。
個人的に今回1番凄いなぁと思ったのが演出。
不思議で幻想的な舞台を上手く表現していました。

演出の中でも特にMVPだったのは照明。
良い仕事してました。

あとは、お花。
小川さんが曲の進行に合わせて桜や藤の花を完成させていくんですが、
曲が終わるまでに完成させなきゃいけないし、かといって
ただ完成させるだけじゃなくて、ちゃんと“魅せて”完成させるというのは
本当に凄い大変だったんじゃないかなと思いました。

それから上から桜の花が降ってきたシーンでとても美しさを感じたのですが、
そのシーンが終わってから一瞬暗くなって舞台が変わるんですけど、
その時に出てくる黒子さんによるお掃除部隊の仕事の早さに感動しました。


最後に、個人的な気持ちを1つ。



前半は明るい照明に、華やかな音楽、満開の桜
後半は暗い照明に、静かな音楽、蓮の花。
蓮の花って宗教的な意味合いだと死んだ後の世界によく咲いている花ですよね。

最後の最後で静かな部分から花火みたいな終わり方をしました。

この公演、光源氏の生涯を
現した舞台という事がよくわかりました。

そこのところをふまえて。



なんというか人間の一生って太陽の日の出と日の入りみたいなものだと僕は思うんですけど、
僕はそれに自分を当てはめるとまだまだ一番高いところには来ていないなと思い込んでいるのですが、
「いつかは沈んじゃうんだよな…」、なんて思うとちょっとなんともいえない気持ちになります。

夕日って、僕はあんまり好きじゃないんです。(朝日の方が好きです。)
普通の人なら夕日を見るとロマンチックというかノルスタジーを感じると思うのですが、
僕はあの地平線に沈む前の燃えるような真っ赤な色と不自然なくらいに伸びる自分の影が
不気味に感じて、「なんか悪い事が起こりそう」って気分になってしまいます。
(これは僕の昔の記憶のせいなんですけど。)

…でも、最後の夕日の時は出来るだけ多くの人に
「綺麗な夕日だったね」って見てもらえて、銀河鉄道に乗り込みたいなと思いました。


いやー、本当に不思議な舞台でした。
僕はヌッツォのモーツァルトが大好きです。

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